「カメイビル」使いながらZEB改修


管理部長
遠藤様
(肩書はインタビュー時点)

管理部経理財務課 担当課長
佐藤様
(肩書はインタビュー時点)
事業者設備・取組・設備導入概要
貴社の事業と設備導入/更新を実施したビルについて教えてください。
当社は、明治36年創業の総合商社で、エネルギー(石油・LPガス)、食料品、建設事業、自動車関連、ヘルスケア(薬局)、海外・貿易事業など、「エネルギー」「食」「住」を軸に多岐にわたる分野で事業を展開しています。東北地方を中心に、国内外で暮らしに欠かせない商品やサービスを提供しています。今回、設備更新を実施した「カメイビル」は、本社ビルとして使用しており、従業員約350人が勤務しています。
貴社で取り組んでいる環境に配慮した企業活動について教えてください。
サスティナビリティや環境負荷低減の取り組みは、一企業として求められており、化石燃料のエネルギーを扱っている当社として、積極的に取り組まなければならないという使命感を持っています。これまで各拠点において太陽光発電システムの導入や本社カメイビルでは「CO2フリー電力」をすでに利用しています。
実施した設備導入/更新の概要を教えてください。
「高効率空調設備への更新」「人感センサーや照度自動調整機能を導入したLED照明設備への改修」「窓ガラスを断熱性の高いLow-Eガラスへの交換」を実施し、また窓ガラスに建材一体型の太陽光発電システムを取り入れ、最新の創エネ技術も導入しました。今回の改修工事により、ZEB Readyを達成しました。
設備導入/更新の背景・経緯
設備を導入/更新した経緯・背景を教えてください。
持続可能な未来を目指し、脱炭素化を進めることはエネルギー会社として重要な使命と考えています。会社全体を脱炭素化することは容易ではありませんが、できる取り組みとして、本社ビルを「ZEB Ready」とすることとしました。照明・空調機器の更新のタイミングであったことや、仙台市が脱炭素先行地域に選定されたことも追い風となり、本社ビル全体のエネルギー性能向上を図る好機と捉え、総合的な改修を行う判断に至りました。
営業活動を止めることや仮オフィスへの移動も行うことなく、業務への影響を最小限に抑えることを重視したため、「使いながらZEB改修」を実施することとしました。居ながらの工事は、土日や夜間作業のため、工期は長くなりますが、仮移転費用や従業員の負担が少ないため、トータルコストは抑えられると判断しました。
設備導入/更新の効果
設備導入をしたことによりどのような効果・反響があったか教えてください。
従業員から、執務環境が快適になったという声が出ています。これまでは、エアコンの吹き出し口に羽根をつけて風向きを調整したりしていましたが、自動制御となり快適に仕事ができるようになった印象もあります。窓ガラスの断熱性が向上したことで、特に窓に近い従業員は影響が大きいようです。また、省エネ機器へ切り替えたことで、電気の使用量が少なくなったことは非常に大きな効果だと感じています。
設備導入の課題・対応策
設備導入/更新にあたって苦労されたことを教えてください。
空調工事については、電力需要が低い春・秋などの時期に実施しましたが、例年になく想定以上の暑さとなり、代替えとして設置したスポットクーラーでは十分な効果が得られず、急遽、仮設エアコンを各フロアに設置しました。想定外のコストとなりましたが、従業員が少しでも快適に業務に専念できるよう対応いたしました。
定禅寺ZEBスポットの掲示について
仙台市では、ZEBに対する市民や事業者への理解浸透と既存ビルのZEB改修の普及促進を目的に、定禅寺通エリア等でZEB化に取り組むビルを「定禅寺ZEBスポット」と位置づけ、改修工事の仮囲い等を活用した広報を実施しています。カメイビルでは、第1号の定禅寺ZEBスポットとして、仮囲いやゴンドラに広報パネルを設置し、広報活動にご協力いただきました。その反響について教えてください。
仮囲いやゴンドラに広報パネルを設置したことで、ビルに来訪されたお客様とは必ず工事の話題となりました。営業を止めず、従業員も移動せず、居ながら工事は前例が少ないということで高評価のお声をいただけました。
通常、工事をしているだけでは、ZEB化をしていることはわかりません。その取り組みを「見える化」することで、当社の環境負荷低減に向けた活動を伝える良い機会になったと感じています。またビルで勤務する従業員にも、良い影響があったと思います。


定禅寺ZEBスポットの詳細はこちらをご覧ください。
省エネ・ZEB改修見学会の開催について
令和7年10月に改修工事中のカメイビルを会場に、現場見学会・セミナーが開催されました。ビルオーナーや建設業者、設備設計事務所など様々な業種の事業者様に参加いただきましたが、その反響について教えてください。
カメイビルの施工事業者である大成建設様による講義のほか、実際に作業している工事現場も見学いただきました。既存ビルのZEB改修事例は珍しく、参加者からは積極的に質問をいただき、関心が非常に高かったと感じています。
見学会で紹介していた「建材一体型の太陽光シートを設置した窓ガラス」は最新の技術でもあり、多くの参加者から関心を集めていました。導入の経緯など教えてください。
東北では初導入と聞いています。スペースの問題で屋上に太陽光を設置できなかったのですが、エネルギーを扱っている会社として何とか創エネ設備を導入できないか検討しました。最新の設備で、費用対効果という点ではやや限定的ですが、ZEB化したビルの特徴的な設備となるため、導入することを決めました。


今後の展望/導入を検討している人へのメッセージ
他の所有ビルへの展開について検討していましたら教えてください。
他のビルについても、太陽光やZEB化への取り組みができればとは思いますが、ビルの築年数や設備更新のタイミングなど課題も多く、計画的に取り組んでいくことが今後の課題です。また今回の本社ビルの工事は、当社社員が勤務するビルのため、臨機応変な対応も可能でしたが、テナントビルの場合は、より配慮した対応が必要となるため、今回の改修工事の経験を活かしたいと思っています。
ビルが位置している定禅寺通エリアで、ビルのZEB改修が複数実施されていますが、今後どのような変化を期待しているか教えてください。
当社だけの取り組みでなく、カーボンニュートラル、ゼロカーボンをエリア全体で進め、エリアの価値を高める取り組みが重要であると考えています。当社は定禅寺通まちづくり協議会の会員で、エリアのまちづくりにも関わっていますが、脱炭素をきっかけとした、魅力あるまちづくりに関しても、地域とともに取り組んでいきたいと考えています。
導入を検討している人へのメッセージをお願いします。
使いながら改修において、施工事業者との綿密な打ち合わせは不可欠です。当社では、毎週定例会議を実施し、綿密な社内調整や施工調整も行いました。特に、空調や停電作業は入居するテナント営業にも影響するため、事前の計画や臨機応変な対応も必要となります。当社の取り組みが少しでも、使いながら改修の参考になれば幸いです。
施工事業者としての取り組み(大成建設様へのインタビュー)
貴社の脱炭素社会の実現に向けた取り組みを教えてください
当社では、脱炭素社会の実現を重要な経営課題の一つと位置づけ、建物の設計・施工・運用の各段階において、CO₂の排出量をできるだけ抑える取り組みを進めています。
具体的には、環境に配慮したコンクリートや低炭素建材の採用、施工時の省エネルギー化や資材ロスの削減、さらには建物のライフサイクル全体でのCO₂排出量の把握・評価などを通じて、建設分野における脱炭素化に取り組んでいます。
今後も、技術開発や実証を重ねながら、地域社会と連携し、実効性のある脱炭素の取り組みを広げていきたいと考えています。
今回の施工で工夫した点や苦労した点を教えてください
1.工夫した点
今回の施工では、まずT-Green Multi Solar(=「建材一体型の太陽光シートを設置した窓ガラス」)のシースルータイプを採用した点が工夫の一つです。これにより、採光及び意匠性を確保しながら太陽光発電設備の導入を可能としました。
また、環境負荷低減及び資源の有効活用を目的として、産業廃棄物の分別を徹底し、特に金属くずのリサイクルを重点的に実施しました。現場内には廃棄物の種類ごとの専用保管場所を設け、明確な表示を行うとともに、作業員に対して分別方法の周知徹底を図りました。排出段階からの混入防止に努め、定期的に分別状況を確認することで、適正管理を実施しました。
とりわけ金属くずについては、エアコンの室内外機等を他の廃棄物と分別したうえで専用車両にて回収し、許可を有する処理業者へ委託のうえ全量を再資源化処理としました。これにより最終処分量の削減を図るとともに、資源循環型社会の推進および環境保全に貢献しています。
さらに、ビル内の管理業務やカメイ様の営業への影響を最小限に抑えるため、工事は夜間等の営業時間外や、休日・土日に実施するとともに、工事をスムーズに進めるため、休日や土日に作業を集中させ、連日で作業が可能となるよう調整して実施しました。
資材の配置については、使用していない会議室等を資材置き場として活用し、工事範囲内に資材を置かず、最大限にスペースを有効活用する施工を行いました。
また、カメイ様がビルを使用しながらの施工となるため、事前に綿密な打ち合わせを重ね、双方で認識を共有しながらスケジュール管理を徹底しました。
あわせて、カメイ様の社員の皆様およびお客様が出入りされる環境であったため、安全管理を十分に徹底しました。工事に関するご案内についても、エレベータ内の掲示を通じてカメイ様の社員の皆様へお知らせする等、漏れのない周知に努めました。
2.苦労した点
工事期間中に苦労した点はいくつかあります。
まず、カメイ様がビルを使用しながら施工を行う改修工事であったため、カメイ様の什器や備品を傷つけないよう、養生には細心の注意を払いました。また、同日に施工が複数箇所にまたがる日程については、カメイ様との日程調整に特に配慮しました。
外壁ガラスの交換作業は休日や土日のみの対応となっていたため、天候によって中止となる場合がありました。その際には、作業日程の再調整や、カメイ様所有物の移動調整にも配慮が必要でした。
さらに、冷房期と暖房期の間にあたる、通常は空調を使用しないと想定される時期での工事を想定していましたが、近年の気候状況から常に空調機を使用していましたので、本設空調機を停止するにあたり、工事期間中に使用する仮設空調の機器選定に苦慮しました。

その他、脱炭素社会に向けたメッセージをお願いします
脱炭素社会の実現は、企業や行政だけでなく、地域全体で取り組んでいくべき課題だと認識しています。
建設分野においては、一つひとつのプロジェクトでの選択や工夫の積み重ねが、将来の環境負荷の低減につながります。私たちは、環境に配慮した技術や施工方法を、特別なものではなく、日常的に選ばれる選択肢として定着させていくことを目指しています。
今後も、仙台市をはじめとする地域の皆さまと連携し、持続可能で安心して暮らせるまちづくりの実現に貢献していきます。